R&D Team
熱い想い
ご挨拶
理事 近藤 隆 Takashi Kondo, Ph.D., D.M.Sc.
富山大学 名誉教授、名古屋大学 客員教授 低温プラズマ科学研究センター
熱をもって病を制す
最近、コロナ感染症により体温計を使うことが増えました。また、多くの施設の入り口には必ずと言っていいほど体温を測り表示する装置があり、これで体温確認、また、病院には新たに発熱外来が設置されるなど、熱を取り巻く環境は一変しました。古来より”熱“は病気のシグナルで、体調がすぐれない時必ず体温を測定します。腋下温、舌下温、直腸温などですが、実は体の内部の温度を外から測ることは非常に難しいのが現実でした。この熱ですが、体温やサーモグラフィ等の診断のみならず、治療にも有用なことがわかってきました。それはがん組織が熱に弱いことを利用し発達した”ハイパーサーミア”治療です。また、超音波を体の一か所に集中して治療するハイフ治療、針の先から電磁波を出して必要な部分を焼灼するアブレーション治療など、熱を使った治療法が発展してきました。温度を少し上げると例えば抗がん剤の効果を高め、副作用を減らすこともわかってきました。今まで難しいとされた体の内部の温度情報を外から調べ画像化する技術も最近では著しい進歩を遂げております。
2021年のノーベル生理学・医学賞は、人間の熱さや接触を感じるセンサーの発見で、アメリカのデビッド・ジュリアス氏とアーデム・パタプティアン氏の2人に贈られることになりました。興味あることに熱さや接触を感じるセンサーはトウガラシの辛み成分カプサイシンを感じるセンサーと同じであります。熱いと感じる分子メカニズムがわかったわけです。最近の技術では細胞内の温度も測れるようになってきました。いままで、当たり前と思っていた熱(温度)に科学的な注目が集まる時代となりました。
今回、熱(温度)を利用した診断および治療機器の開発を目指して、持てる知識・技術を集結し、発展につなげようとNPO法人シーアンドシーが立ち上がりました。皆様方のご理解とご支援をお願いできれば幸いです。
理事 竹内 道雄 Michio Takeuchi
立山科学株式会社 技術本部 主任技師
がん細胞は温度上昇に弱く約42.5℃ の温度でネクローシスを起こすことは広く知られています。しかしながらハイパーサーミア治療中の腫瘍組織内温度上昇を非侵襲的にモニターする手段がないためハイパーサーミア療法は有効な治療法にもかかわらず普及しているとは言えない状況にあります。我々研究グループはこの副作用がほとんどない患者様に優しいがん治療法を世の中にもっと広め患者様達がハイパーサーミア治療を受ける機会を増やしたいという想いから超音波を用いた体内温度上昇の非侵襲的測定方法の開発を行っております。治療中の腫瘍組織内温度上昇の測定が可能になることで今まで困難だった治療中の印加電力の調節や腫瘍組織内温度上昇の確認を行えるようになりハイパーサーミア治療の治療効果の飛躍的向上また普及に貢献できると考えております。皆様からの温かいご支援を頂けましたら幸いに存じます。